研究施設の現状と将来計画 295
8-2 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構・分子科学研究所・分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目 的として「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の 開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに, ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下 で共同研究等を推進することを目的とする」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナノサイエンス研究を行う」 機能と,「ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理と共同研究の推進」という機能が要求されていることになる。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエン スセンターと(新)機器センターに分かれることになった。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置 類およびそれらの装置の責任者であった技術職員は機器センターに所属替えとなった。センター長は,物質分子科学 研究領域・電子構造研究部門の横山利彦教授が併任で務め務めている。ナノ分子科学研究部門の小川琢治教授が平成 19年9月に大阪大学大学院理学研究科教授として転出(現在当センター兼任教授),その後任として,平成20年4 月に平本昌宏教授(前所属は大阪大学大学院理学研究科,准教授)が着任した。これ以外の専任教員は,鈴木敏泰准 教授,永田央准教授,櫻井英博准教授の3名である。
共同研究支援に関しては,平成19年度から文部科学省のナノテクノロジー・ネットワークプロジェクト(5-5 参照) を研究所として受託し,ナノセンターの業務としてこれを運営している。これを遂行するため,併任教員を配置した。 ナノ計測研究部門には,横山利彦教授,西信之教授,岡本裕巳教授,永山國昭教授(岡崎統合バイオサイエンスセン ター),ナノ構造研究部門には,加藤晃一教授,永瀬茂教授が併任し,ナノネットプロジェクト業務を実施している。 また,920 MHz NMR でのプローブ開発として,西村勝之准教授が併任している。ナノセンターが管理する共通機器は, 920 MHz NMR ,300kV分析透過電子顕微鏡,走査電子顕微鏡,集束イオンビーム加工機,クリーンルームがあり,ク リーンルームを除いてはナノネットを通して共同利用(協力研究と施設利用)に供されている。ナノネットの内容や 成果に関しては 5-5 に記述する。
センター運営委員会は,センター長を委員長とし,専任併任教授・准教授全員,センター以外の教授・准教授若干名, 外部委員からなる。20年度外部委員は,夛田博一大阪大学大学院基礎工学研究科教授,山口芳樹理化学研究所チー ムリーダー,馬場嘉信名古屋大学大学院工学研究科教授,隅山兼治名古屋工業大学大学院物質工学専攻教授,榊裕之 豊田工業大学副学長(電子情報分野教授)であった。超高磁場 N M R に関する現状と将来,ナノネットプロジェクト に関して評価や提言をいただいた。
超高磁場 N M R は平成18年度まで実施されていたナノサイエンス支援において設置された。溶液から固体試料の ナノ構造精密研究を実現する世界最高かつ唯一の装置である。本機の機能を縦横に活用して,タンパク(中でも膜タ ンパク糖タンパクのような難結晶性複合タンパク),固体ナノ触媒,有機−無機複合コンポジット,C N T及びフラー レン類縁体の精密構造研究,海洋性巨大天然分子などのナノサイズ分子構造体の高次構造や動的挙動の精密解析など に対して,ナノネットを通して共同利用に供されている。本年度は,新たに西村准教授が温度可変固体プローブの開 発を進めることになった。また,平成20年4月に岡崎統合バイオサイエンスセンター教授として着任した加藤晃一 教授を中心として,精力的に本装置を活用したタンパク質構造解析研究を遂行している。さらに,桑島邦博教授のグ ループもパワーユーザーとして加わり,所外共同利用を含めてますます充実した先端利用が期待できる。
296 研究施設の現状と将来計画
昨年度の分子研リポートで短期的事業計画として掲げた目標のうち,温度可変プローブ開発は来年度中にも共同利 用の実現が可能となった。また,ニュースレター・パンフレットの発行に関しては,まずアクティビティレポートの 発行という形で行い,今後さらに検討する。
ナノネットにおける共同利用機器のうち,U V S O R - I I を利用する超伝導磁石高磁場極低温X線磁気円二色性測定装 置(電子構造研究部門所有)に関しては,利用者数が多くなったため,U V S O R - I I B L 4B のビームタイムのうち一定 時間をナノセンターが利用し,その中で利用者支援を行うという体制を整えた。今後,機器をナノセンターに移管し てさらに共同利用の利便性を高めるなどを検討する。
中期・長期的な事業展開として,第一に N M R高度化をさらに推進する。このため,まずは予備測定を実施する 600MHz クラスの固体測定に対応できる中規模 NMR 装置の導入を実現する。920 MHz NMR を最大限有効に活用する には,同じ環境で作動する予備装置を利用できることが極めて重要である。また,現状では
1
H と
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N の 2 核種しか 測定できないので,核種の拡張を目的としてプローブを開発する。これらの高度化を実現するため,また,分子研 NMR をコアとした全国研究ネットワークを形成して,外部資金獲得を目指す。